お兄ちゃんといっしょ。
躊躇うように、照れ臭そうに頭をかくと、兄はもう一方の手を私に向けてつきだした。
ガサリ、とビニールが揺れ、鼻先につきつけられたそれは、その形を露にさせる。
ヨーグルト、だった。
今朝、口論の大本になったそれが、ビニールの中に入っていた。
「学校帰りに買ったけど……俺、その、食えねーし……」
ブツブツと呟く。
意図があまりにもわかりやすすぎて、私は少しの間、呆気にとられていた。
「か……勘違いするなよ!?別にお前の為じゃないからな!!俺の為だ!!……そんな、仲直りしたいとかじゃなくて……」
「素直になりなよ、言うことはそれだけじゃないでしょ?」
言葉を遮って言ってやると、兄は目をそらし、罰が悪そうな顔で、
「……ごめん」
と、小さく、しっかりと呟いた。
素直じゃないなぁ。
必死に私と仲直りしようとしていた兄は、よく見るととても可愛く思えた。
兄が可愛いだなんて、ちょっと君が悪い。が、確かに、可愛く思えたのだ。
「よくできました」
一言言ってやると、兄は黙りこんでしまった。
が、言葉の意味は汲み取れたようで、安堵しているのが丸わかりだ。
そんなに思いつめていたのか、と思うと何だか罰が悪い。
つきだされたままのビニールを受けとり、『ありがとう』と言うと、兄は『おう』と、顔を背けながら嬉しそうに笑った。