お兄ちゃんといっしょ。
ver.3 ヤンデレ
……お兄ちゃんの愛情が重いです。
家族愛も、度を過ぎると異常と見なされる。
父親が娘に……とか、よく聞く話だ。まぁ、だからって別にウチのお父さんがどうこうってわけじゃない。
そう、お父さんが、じゃない。
「おかえり」
ドアを開けて玄関に入ると、兄が待ち構えていたかのように立っていた。
整った顔に爽やかな笑みを張り付けるその姿は、最早日常的な光景である。
そう、日常的。兄はこうして、いつも私の帰りを待っているのだ。
「……ただいま」
またか、と思いつつ、私は靴を脱いで自分の部屋へと向かう。なるべく、早足で。
「なぁ、今日はどうだった?」
兄が、一定の距離を保ってついてくる。
「別に、普通だったよ」
「本当か?嫌なことなかったか?」
「うん」
「一時間目は何だった?」
「数学」
「休み時間は?誰と話した?何をした?」
「覚えてないよ」
部屋の入り口が近づく。それに従って、兄の淡々とした声の速度が増し、質問は応える暇も与えずにつむがれる。
「二時間目とその次の休み時間は?授業中は?三、四時間目と休み時間、あと昼休みは?午後も何もなかったのか?帰りは?誰と帰った?変な奴に」
「大丈夫だよ」
質問の嵐を遮り、私は部屋の前で振り向き、笑ってみせた。
「……そうか」
兄はそれを確認すると、安堵したように顔を綻ばせる。
その表情を同じく確認して、私は自室の扉を閉めた。