ひとりごと
スタートの位置につく
もう逃げられない
走るしかない
いつも練習でつけていた
息子の腕時計
今日もタイムを測ろうと
左腕につけている
スタートと同時にボタンを押す
自分のいつものペースで
そう思って飛び出すと
前に誰もいなくて
一番前で走ることに
コースの両側に応援してる人
『頑張れ!』
いくつもの知り合いの声が
あちらこちらから聞こえる
1周め いつもより
ペースが速い気がする
一番前のまま2周めに
いきなり体がきつくなる
予想はしてたものの
息があがりそうになる
そこを何とか
呼吸が乱れないように
必死に整える
後ろがどうなってるのか
全く検討もつかず
いつ後ろから抜かれるか
不安になりながら
けれど気持ちを奮い立たせ
最後のコーナーを回る
『先頭が本部席前を
通過します』の放送が
耳に入る
最後の直線で
まだまだ遠いゴールを見て
気が遠くなりそうな頭で
先頭は今のところ私だな
そう思った
もう呼吸を整える余裕はない
必死に酸素を取り入れる
負けそうな気持ちに
後はゴールまで走るだけと
言い聞かせながら
きつい足の変わりに腕を振る
それでも直線半分の所で
きつくてきつくてたまらない
その時 声が聞こえた