空色幻想曲
千里眼
──遠く離れた処の出来事や人の心の中を知り、未来を見通す力。
それに等しい力を確かに持っていた。
魔法や魔術の類ではない。経験、知識、そして自身が見聞きし得た情報から、優れた洞察力を発揮する。
普段のくだけた態度は周りに『能天気』と受け取られているが、二つ名が意味する彼の聡明さを、リディアはよく知っていた。
亡き夫君アーウィングの乳兄弟であり、唯一無二の親友。
夫君がこの騎士によせていた信頼はそのままリディアが受け継いでいる。
「まあ、たとえ城内でも用心するに越したことはねぇ。リディアさまに危険が及ぶことは、まずないと思うが」
「私のことよりも、ティアになにかあったら……」
長く美しいまつ毛が光を放っていた瞳に翳を落とす。娘を想う『母』の顔だった。
そんな彼女に、騎士としてではなく親しい身内としていたわりの言葉をそっと投げかける。
「心配いらねぇよ。親衛隊が……リュートがついてるからな」
「ええ、そうね……」
リディアはどこか遠くへ思いを馳せるように目を細めた。
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──遠く離れた処の出来事や人の心の中を知り、未来を見通す力。
それに等しい力を確かに持っていた。
魔法や魔術の類ではない。経験、知識、そして自身が見聞きし得た情報から、優れた洞察力を発揮する。
普段のくだけた態度は周りに『能天気』と受け取られているが、二つ名が意味する彼の聡明さを、リディアはよく知っていた。
亡き夫君アーウィングの乳兄弟であり、唯一無二の親友。
夫君がこの騎士によせていた信頼はそのままリディアが受け継いでいる。
「まあ、たとえ城内でも用心するに越したことはねぇ。リディアさまに危険が及ぶことは、まずないと思うが」
「私のことよりも、ティアになにかあったら……」
長く美しいまつ毛が光を放っていた瞳に翳を落とす。娘を想う『母』の顔だった。
そんな彼女に、騎士としてではなく親しい身内としていたわりの言葉をそっと投げかける。
「心配いらねぇよ。親衛隊が……リュートがついてるからな」
「ええ、そうね……」
リディアはどこか遠くへ思いを馳せるように目を細めた。
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