空色幻想曲


「ひみつよ……」


 人差し指をあてた麗しい(くれない)のつぼみが上弦(じょうげん)の弓なりを描く。

 ひかえめだが妖しいまでの美しい微笑に青年は魅せられた。年端(としは)のいかない少女だというのに(つや)めいた仕草には何度見てもため息が出る。

 そして──

 少女の真意は、夜のとばりに隠れたまま。
 二つのシルエットはひっそりと藍色の闇に溶けていった。

********************
< 107 / 347 >

この作品をシェア

pagetop