空色幻想曲
「──その条件なら、私は無関係どころか貴方の妹ですけれど」

「オマエはボロを出すようなヘマしねぇだろ? セージュ兄貴じゃダメだけどな」

「セージュお兄様は確かに……」

 いつになく素直に同意した。
 セージュは真面目で模範的な騎士ではあるが、どこかネジが一本ゆるんでいる兄だった。

 ……いわゆる天然ボケというやつだ。

 目の前にいる破天荒な兄と、天然の兄。同じ血を分けた兄弟でどうしてこうも違うものかと、シレネは内心で見比べて呆れた。どちらの兄も、妹にとってはため息の材料でしかないのだが。

「勘づかれたのがダリウス様でよかったですわ……。私、心臓が止まるかと思いました」

「見えねぇな……」

 柱の陰からやり取りを見ていたが、妹の動揺は、千里眼の異名を持つ兄の目から見ても全く感じ取れなかった。
 我が妹の鉄仮面と鋼の精神に改めて感心した。

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