空色幻想曲
『穴場』というのは、いつもかくれんぼに利用していた秘密の場所だ。いわゆる非常時に使われる、王宮のかくし通路だったり、かくし部屋だったり。

 今いる場所もその一つ。
 さっきの地鳴りは部屋の仕掛けを解除した音だ。

 本来限られた者にしか知らされない極秘事項だけど、子どもの無邪気な好奇心とは恐ろしいもので。

 私はそういった場所を見つけるのが大得意だった。

 レガートはよくいっしょに遊んだから穴場の存在は知っているけれど、騎士になったばかりのリュートが知るはずもない。

 つい、子どものときと同じノリで、本気でかくれんぼする気まんまんになっていた。

「姫ってときどき抜けてますよね……」

「お願いっ、レガート、見逃して!」

「早く戻らないとダリウス殿に叱られますよ」

 さわやかな笑顔を消してたしなめられたが、今もどっても叱られる。目的を果たして叱られるならかまわないが、果たさずして叱られるなんてカンベンだ。

「どうしても見つけたいの!!」

 手を組み祈りのポーズで拝み倒す。
 レガートは困惑の表情で深い息を吐いた。

「……今回だけですよ」

「ありがとう! ──で、どこを捜してるの?」

「姫がよく行かれる場所をあたっていけば、どこかで鉢合うんじゃないでしょうか」

 今度こそ! と意気ごむと、レガートがやや生温かい笑顔で見送った。

「僕も叱られるかな……」なんてボソリとつぶやいて。

 ……ごめん。レガート。ホントにありがとう。持つべきものは幼なじみだ。

********************
< 141 / 347 >

この作品をシェア

pagetop