空色幻想曲
 私の照れを乙女のはじらいと受けとったのか、大きなルビーの瞳をきらめかせた。

「水くさいですわ、おねえさま。そんな殿方がいらっしゃるなら、わたくしアリバイ工作でもなんでもご協力しましたのに」

「そんなんじゃないってば!」

「まあ、つまらない」

 あわてて否定すると心底つまらなさそうにため息をつかれてしまった。

 いや、まあ、探していた相手は殿方だけれども。剣ふりまわして追いかけるような血生臭い逢瀬なんか、私もちょっとイヤだ。

「エリーゼったら。そういう話、好きよね」

「女の子ですもの。おねえさまのお年ごろでしたら、ういた話の一つや二つあっておかしくありませんのに。剣ばかりふりまわしてるんですから」

「あはは……」

 かえす言葉もございません。

「ふふっ。つぎのお休みは空いていらっしゃる?」

 甘えた響きで尋ねてくる、その細めた瞳がドキリとするほど艶っぽい。見た目はまちがいなく12歳の少女なのに、一つ一つの仕草や表情が悩ましいくらいに大人びていた。

 う~ん、頭だけじゃなくて色気のほうも完全に負けている。

「次の休日ね。大丈夫よ」

「でしたら、おねえさまのお好きなオレンジケーキを用意しておまちしていますわ」

「うわぁ、楽しみ!」

「じゃあまた。さ、こっちにいらっしゃい」

 と、私の胸もとに手を伸ばす。子ネコが返事をするように小さく鳴いた。
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