空色幻想曲
「きゃあっ!」


 金属音、衝突音、悲鳴が、ドミノ倒しのようにかぶる。

 あの一瞬、鋭い(やいば)が確かに青年の背後をとらえた。
 けれど次の瞬間にはもう、剣はあらぬ方向を向いて遠く離れた回廊の床に転がっていた。

 青年は、扉の前でちょっと後ろをふりかえっただけ。ちがいというと、腰の大剣がいつの間にかぬかれていることくらいだ。

「…………きゃあ?」

 間のびした低い声が怪訝(けげん)な色をおびる。

「お前、女か。……どういう了見だ」

 ギラリと光る刃と同じく突き刺さるような言葉を投げた。

「うわっ、待った待った! 参った、降参(こうさん)っ、私の負けよ! ね!?」

 殺気すら感じる気迫にあわてて両手をふり、もう戦う気がないことをしめした。
 急いで起きあがろうとするけれど、鎧が重い。

 もたついていたら、目の前にスイッと大きな手が差しだされる。長身の体を折り曲げて片ひざをついていた。ちょうど従者が主人にかしずくみたいに。

「あ、ありがと」

 手を借りながら重い体をなんとか起こして銀の兜を脱いだ。

 はらりとこぼれ落ちる、


 長い……髪。
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