空色幻想曲
「あ、このネコ、エリーゼのだったの?」

「ええ。『シルバー号』よ」

 子ネコをわたしながら一瞬、目をパチクリする。声が小さいから聞きちがいかなと思ったけど。

「し、シルバー号? それって……名前?」

「ええ」

「だれがつけたの?」

「わたくしよ……変かしら?」

「い、いやっ、そんなことはないけど……」

「みんな、びみょうな顔をするの」

 うん、そうだろうね……。なんていうか、小さな男の子がオモチャにつけるようなネーミングセンスというか。

 なんで『号』ってつけちゃったの?
 なんで黒ネコなのに銀色(シルバー)なの?

 いや、色はまあいいとしても……頭の良い子なのに、変なところで人と感覚がずれているところがたまにある。

「ほかの人はシルバって呼ぶわ。愛称みたいなものね」

 ああ、それならふつうの名前っぽい。

「そっか。じゃあ私もそう呼んでいい?」

「ええ」

「でもネコ飼ってたなんて知らなかったなぁ。いつから?」

 たしか前にエリーゼと会ったときはいなかった気がする。
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