空色幻想曲
 枝に足をかけて、起こさないよう気を配りながら上へ上へとよじ登っていく。

 こういうとき自分の普段着が王子服でよかった、とつくづく思う。ドレスだったらこうはいかない。

 王子服と言っても、王宮御用達のデザイナーが私専用に作ったものだから、ちゃんと女物ではある。

 最初は『動きやすい服』という注文だったが、試行錯誤(しこうさくご)を重ねるうちに『王子服を女物にアレンジする』という発想になった。その形が一番、私の意にそうと思ったのだろう。

 事実ピッタリとはまった。

 周囲は「王女に男物の服を着せるなんて」と、うるさくとがめたそうなのだが。これを考えたついたデザイナーはいい仕事をしている。

 女物の服は華やかでかわいいけれど、どうしてああ着るのが大変なうえに動きづらいのだろう。コルセットで締めつけられた苦しさと言ったら、何度着ても慣れるものじゃない。

 あれなら重い鎧を着るほうが百倍マシというもの。ドレスは苦しいだけで身を護る機能は備えていないのだから。

 まあ私も女の子だから、式典でたま~に着るくらいなら新鮮でいいけどね。

 ……なんてことを考えているうちに、彼のすぐそばまでたどり着いた。
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