空色幻想曲
「まあ、なんというか……男の性だ」
「しれっと本音を言うんじゃないわよーっ!!」
なにかがブチンッと音を立てて切れた。
「バカ────ッ!!」
あお向けのままボディに渾身のエルボーをお見舞いした!
瞬間、腕の拘束が解かれたので急いで起きあがる。
みぞおちにエルボーをもろに喰らった彼は、何度か咳きこんでノロノロと立ちあがった。
「……これが王女のすることか」
「不良騎士のあなたに言われたくないわ! 王女にこんなことする騎士なんて見たことも聞いたこともないわよ!!」
「不可抗力だと言ったろう」
悪びれもしない。
このむっつりスケベ……もう二、三発エルボー喰らわせてやればよかった。いや、蹴りでもよかったかも。
そのとき、電光石火の閃き。
「一撃!」
張りあげた一言に、彼が「は?」マヌケな声を出す。
「『は?』じゃない! あなたに一撃喰らわせたんだから、約束どおり剣の稽古つけてもらうわよ!!」
「いや、おい、待て。剣の一撃じゃな──」
「剣じゃなくても一撃は一撃。そもそも初めから剣で一撃だなんて聞いてないわ!」
「しかし、だな……」
いつもはふてぶてしい顔が困惑の色に染まる。もうひと押しだ!
「男に二言はないわよね?」
「それは……」
「な・い・わ・よ・ね?」
有無を言わせぬ強い口調と、とびっきりの笑顔ですごんだ。