空色幻想曲
「本当に……空色の姫……?」

 問いかけ、というよりも幻でも見ているかのようにぼんやりとつぶやいた。

 私が本物の “空色の姫” であることは、髪の色を見ればわかるはずだ。この世に一人しかいないめずらしい色なのだから。
 それでもなお、信じがたい、といった様子だった。

 まあ、あたりまえか。兵士のカッコしたお姫様が斬りかかってくるなんて、夢にも思わなかっただろう。

「ええ、私がティアニス=クレツェントよ。ごめんなさい、驚かせて。あなたの力が知りたかったの」

「俺の……力?」

「私の護衛をする騎士が、私にやられるようじゃ務まらないでしょ?」

「…………」

 整った顔がゆがむ。もともと整いすぎなくらい整っているから、ゆがめてもきれいな顔に変わりなかった。

「もちろん、あなたは合格よ! これからよろしくね。えーと……」

「リュート=グレイ」

 (たず)ねるより先に、ゆがめた顔のままぶっきらぼうに名乗った。

「リュート……きれいな名前ね……」

 かみしめるようにつぶやいてみると、優しい響き。騎士にしてはちょっと優しすぎるくらい。

「よろしくね、リュート!」


 時は、ウォルシード暦1299年、1の月、太陽の日。

 それが、私と、
 隻眼(せきがん)騎士(きし)リュートとの出逢いだった。
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