空色幻想曲
「あんたに礼を言おうと思っていた」

「礼?」

「隊長に推薦してくれたと聞いた」

「ああ。別に礼なんかいらねぇさ。それだけの実力がオマエにあったからだ」

「ならばレガートが隊長でもよかったはずだ」

「レガートか……確かに実力はオマエと五分五分だ。けど、それだけじゃ隊長は任せらんねぇ。オマエのほうが適任だと思ったんだ」

「なぜだ?」

「“(かん)”さ」

 勘……そんな理由か。

 こんなおちゃらけた男に真面目に訊いた俺がバカだったと内心呆れたが、また心を読んだように

「勘だってバカにできねぇだろ」

 やけに自信満々な答え。

 いったいどういう勘が働けば、俺がレガートより適任だと思えるんだ。レガートは実力だけじゃなく人望もある。それでも俺のほうが適任だと思うのなら、理由が知りたかった。

「平民の俺じゃ隊がまとまらない」

「泣き言か?」

「事実を述べたまでだ」

「隊なんてまとめなくていいんだよ! オマエの実力を目のあたりにしたら隊員はそのうち勝手についてくるさ。
 まとめ役なんか副隊長に任せりゃいいんだ。隊長の足りないところをサポートすんのが副の務めだろ。そういうのはレガートが適任だ。
 仮にオマエが副隊長だったとして、誰かのサポートなんかできるか?」

「無理だな」

「だろ? そうか役職のない平だったら、大人しく上の言うこと聞くなんてオマエにゃもっと無理じゃねぇ?」

「た、確かに……」

 ぐうの音も出ないとはこのことか。
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