空色幻想曲
「な? 適材適所だろ?」

 歯を見せて陽気に笑う。態度はどこまでもおちゃらけているが……

「……意外と考えているんだな」

「納得したか?」

「勘よりはな」

「そりゃ、よかった」

 また、あっけらかんと笑った。

「王女の言う通りだな」

「何が?」

「『フェンネルは人を見る目がある』と」

「そりゃ、どーも」

「…………」

「オマエはそのオレが見こんだ男だ。余計なこと考えずに、しっかりティアを護ってくれなきゃ困るぜ!」

「はあ……あのジャジャ馬姫をか」

 王女の話題に変わった途端、真昼の笑みに掻き消されていた陰鬱(いんうつ)な空気が舞い戻ってきた。

「なんだぁ?」

「自分の存在意義を見失いそうになる……」

「ハッハッハッ! あ~あ、それで湿気たツラしてやがったのか」

 豪快な笑い声。俺は大真面目なのに無遠慮にもほどがある。

「笑い事じゃない」

「ハハッ、悪ィ悪ィ。──ティアは強ぇだろ?」

 素直にうなずいた。粗削りだが、鍛えればもっと強くなるだろう。

「アレを護衛する意味が本当にあるのか?」

「だからこそ、必要なのさ。前にも言ったろ」

 いつか聞いた台詞。藍の瞳に笑みが消えていた。以前は上手くはぐらかされたが……
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