空色幻想曲
「仇討ち……するつもりか」
「さぁ? 本人に訊いてみたらどうだ?」
途端に視線を外してわざとらしくすっとぼけた。
「馬鹿な。少々剣ができる程度で魔族に敵うはずが……」
彼女の腕があれば多少の危険は自分で回避できる。
だが、倒す──いや『殺す』となると話は別だ。
それにはもっと……
『別の覚悟』がいる。
「理屈じゃねぇだろ。そういうのはさ」
「あんたはわかっていて剣を教えたのか!?」
思わず声を荒げた。胸の奥が熱い。
俺よりも彼女と親しいこの男ならば、彼女の気持ちを最初から見抜いていたはずだ!
その事実が、自分でも驚くくらいに心を熱く駆り立てた。
「父親の死をただ嘆き悲しんでるよりマシだろ?」
「マシなものか! なぜ止めなかった!?」
「復讐心だって立派な生きる糧(かて)さ。慈愛の女神なんて言われてっけど、アイツだってキレイなだけのお姫さんじゃねぇんだぜ?」
「あたりまえだ! 問題はそんなことじゃない!!」
──戦う術を持てば、彼女自ら危険に飛び込む可能性があるのに……!