空色幻想曲
 新月の夜。

 それは、黒い、果てのない、天地の境目すらわからない
──真の闇。

 この国を、
 この地上を、
 この世界を、

 全てを呑み込み喰らい尽くす。

 闇の正体は、なんだろうか……?


 魔族────……


 この国が呪われているという、諸悪の根源。
 人々が恐れる悪しき存在……

 そのせいか。

 彼女が、お姫様らしいお姫様でいられなくなったのは。
 剣を持ち気丈に振る舞わなければいけなくなったのは。
“慈愛の女神”として民の希望を一身に背負って。

 全ては

「魔族のせいで……か」

 溜息とともに漏れた呟き。

 痛むはずのない右眼の古傷が、


 やけに……風に()みた。


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