空色幻想曲
◇ ◇ ◇
「じいやのバカ────ッ!!」
空が青々と澄みわたった朝の景観をこっぱみじんにぶち壊す、罵声。
驚くなかれ。
それが発せられたのは、由緒正しいクレツェント王家が住まう雅やかな宮殿からだった。気品のカケラもない声の主が、あの “空色の姫” だと知ったら民はどんな顔をするだろう。
「ティアニス様。一国の王女ともあろうお方が、そのような言葉遣いをなさってはいけません」
私の剣幕に渋い顔で答える、黒服の老紳士ダリウス。
白髪に白ヒゲのおじいちゃんだけど、背筋はピンとまっすぐ伸びていて、年のわりに肩幅のある厳つい体格。周りにいくら隠居を奨められても「死ぬまで現役」と言いはって身体を鍛えつづけているらしい。
そんな、元気のありあまったおじいちゃんだ。
「じいや、私の剣かえして!」
渋顔のダリウスに負けないくらいの迫力で言い放つ。
「うぉっほん! 王女には必要ございません。あんな物にかまけている暇があれば、帝王学のお勉強をなさいませ」
「必要よ! イマドキ王女だって自分の身ぐらい護れないと!!」
にぎり拳を作って声を張りあげた。
世間の物騒な話は王宮にもよく届く。ついこの間も、とある貴族が魔族に殺されたばかりだ。
“魔族に呪われし王国” ──このクレツェントはそう呼ばれている。
「じいやのバカ────ッ!!」
空が青々と澄みわたった朝の景観をこっぱみじんにぶち壊す、罵声。
驚くなかれ。
それが発せられたのは、由緒正しいクレツェント王家が住まう雅やかな宮殿からだった。気品のカケラもない声の主が、あの “空色の姫” だと知ったら民はどんな顔をするだろう。
「ティアニス様。一国の王女ともあろうお方が、そのような言葉遣いをなさってはいけません」
私の剣幕に渋い顔で答える、黒服の老紳士ダリウス。
白髪に白ヒゲのおじいちゃんだけど、背筋はピンとまっすぐ伸びていて、年のわりに肩幅のある厳つい体格。周りにいくら隠居を奨められても「死ぬまで現役」と言いはって身体を鍛えつづけているらしい。
そんな、元気のありあまったおじいちゃんだ。
「じいや、私の剣かえして!」
渋顔のダリウスに負けないくらいの迫力で言い放つ。
「うぉっほん! 王女には必要ございません。あんな物にかまけている暇があれば、帝王学のお勉強をなさいませ」
「必要よ! イマドキ王女だって自分の身ぐらい護れないと!!」
にぎり拳を作って声を張りあげた。
世間の物騒な話は王宮にもよく届く。ついこの間も、とある貴族が魔族に殺されたばかりだ。
“魔族に呪われし王国” ──このクレツェントはそう呼ばれている。