空色幻想曲
 みるみる顔が火照ってきた。北風にさらされても、なお、冷めない熱が全身を駆けめぐる。

「ん……」
「!」

 うっすらと、片方だけの瞳が開いた。

「…………」

「…………」

 流し目でこっち見ているから起きているんだろうけど……反応がない。

 そんなちょっと色っぽい目で見つめられたら──単に寝ぼけているだけだと思うけど──こっちも反応に困ってしまう。

 とりあえず、努めて平静を装いながら声をかけてみた。

「おはよう。きもちよさそうに寝てたわね」

「……ああ、うん。やわらかくて、気持ちいい……」

(はあ!?)

 ちょっとなに言いだすのよ、このむっつりスケベ。

 今の問題発言はどう解釈したらいいんだろう。寝ている間になにもしなかったでしょうね?

 でも困ったことに、寝起きの子どものような顔をされたらかわいくて殴れない。いつもはふてぶてしいくせに、こんなの反則だ。

 代わりにキッとにらみを利かせてみたけれど、彼はまぶたに重りでも乗せているようにうつらうつら。

 ……絶対に寝ぼけている、この人。
 おかしいな。前のときはすぐにパッチリ目を覚ましたのに。

 ピタ。

 右ほほに大きくて温かい手がそえられた。
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