空色幻想曲
†超えるべき背中†
Lute side
********************
「おはよう、グレイ隊長」
「ああ」
騎士宿舎の廊下で。
晴天の朝に相応しい爽やかな副隊長の挨拶をぶっきらぼうに返す。わりと見慣れた、いつもの光景。
そのままいつも通り朝の鍛錬に向かうと、涼やかな声が少し慌てた口調で呼び止めた。
「ちょ、ちょっとどこ行くの?」
「どこって……鍛練場だが」
「今日はいつもと違うよ。こっち」
鍛練場と逆方向の曲がり角を指差す。
「何かあったか?」
「君、若いのにボケてるの?」
「?」
「幹部集会で聞いただろ。今日は、合同訓練の日だよ」
『幹部集会』に『合同訓練』。
騎士になって一ヶ月の俺には馴染みのない単語だが、聞いた覚えはあった。
「ああ、そうだったな」
「全く君は……」
「それでよく隊長が務まるよな」
レガートの呆れ声とは別の刺々しい声がかぶった。視線をやると──
……ああ、やはりな。
赤髪と金茶の髪の二人組。少し離れた壁ぎわで、三白眼と垂れ目がこちらを睨み据えている。レガートの手前それ以上噛みつくことはなく、無言で横を通り過ぎていった。
これもまあ、いつもの光景だ。
「気にすることないよ。彼らもいつかきっとわかってくれ──」
「別に気にしてない」
励ましの言葉を一蹴。
爽やかな二枚目が珍しく苦々しい顔になる。
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「おはよう、グレイ隊長」
「ああ」
騎士宿舎の廊下で。
晴天の朝に相応しい爽やかな副隊長の挨拶をぶっきらぼうに返す。わりと見慣れた、いつもの光景。
そのままいつも通り朝の鍛錬に向かうと、涼やかな声が少し慌てた口調で呼び止めた。
「ちょ、ちょっとどこ行くの?」
「どこって……鍛練場だが」
「今日はいつもと違うよ。こっち」
鍛練場と逆方向の曲がり角を指差す。
「何かあったか?」
「君、若いのにボケてるの?」
「?」
「幹部集会で聞いただろ。今日は、合同訓練の日だよ」
『幹部集会』に『合同訓練』。
騎士になって一ヶ月の俺には馴染みのない単語だが、聞いた覚えはあった。
「ああ、そうだったな」
「全く君は……」
「それでよく隊長が務まるよな」
レガートの呆れ声とは別の刺々しい声がかぶった。視線をやると──
……ああ、やはりな。
赤髪と金茶の髪の二人組。少し離れた壁ぎわで、三白眼と垂れ目がこちらを睨み据えている。レガートの手前それ以上噛みつくことはなく、無言で横を通り過ぎていった。
これもまあ、いつもの光景だ。
「気にすることないよ。彼らもいつかきっとわかってくれ──」
「別に気にしてない」
励ましの言葉を一蹴。
爽やかな二枚目が珍しく苦々しい顔になる。