空色幻想曲
     ◇ ◇ ◇

 鍛練場の何倍もある、円形型の闘技場。

 普段の鍛練は騎士団・騎士隊ごとに集まるが、ここでは一堂に会する。それが、毎月行われる合同訓練だ。

 先に到着した者はすでに自主訓練を始めていた。砂地になった床から軽い砂煙がそこかしこに立ち上る。屋根がないことから察するに、屋外戦闘の訓練として使われるのだろう。

 ぐるりと闘技場を見渡した奥の一角に、何かを(まつ)っている祭壇が目に留まった。自然とそちらへ足を向ける。

 金に似た黄銅の柄頭に緑の石が一つはめこまれた

──長い剣。

 仰々しく祀られているわりに剣自体の装飾はありふれていて使い古した感じの細かい傷や汚れが目につく。どう見ても実戦用で『宝物(ほうもつ)』と呼ぶには違和感があった。

「なんだ、これは?」

「ああ、君は初めて見るんだね。この剣は──」


()れは“英雄の(つるぎ)”だ」

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