空色幻想曲
 レガートが説明する前に、ふっと周囲に影が差し重低音が降り注いだ。

 一瞬、天の声かと振り仰げば、重低音の主が堅固な要塞(ようさい)(ごと)敢然(かんぜん)と立ちふさがっていた。

 なんという巨漢だろう。大概目線は下になる俺が見上げなければいけない。しかも巨体を重厚な(はがね)で固めているから、なおさら大きく見えた。

 ……いや、大きく見せているのは視覚的なものよりも、内包している力のせいか。歴戦の勇士であることは一目でわかる。その内側から放たれる自信が周辺の者にも威圧感を与えていた。

 大男は祭壇の剣に視線を移し、再び地を震わせるような重低音で答える。

「別名を“カイザーソード”と()う」

「カイザーの……剣……」

左様(さよう)。先代のクレツェント騎士団長カイザー殿の剣だ。()の剣は特殊で、カイザー殿以外扱えた者は居ないと云われている。
 貴殿(きでん)ならば如何(いかが)か。空姫親衛隊長リュート=グレイ殿」

「!」

「英雄殿の再来と呼ばれる貴殿の噂は、我が騎士団にも轟いている」

「あんたは?」
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