空色幻想曲
「──(いや)。フェンネル殿のほうが強い」

 告げられた真実は、想像を遥かに超えて心にずっしりとのし掛かった。

「互角と聞いたが……!?」

「戦績は、七四勝、七五敗、一九八分けだ。フェンネル殿が一勝多い」

 いや、それは互角じゃないのか……

(わず)か一勝でも実力伯仲の者程、大きな差だ。現状に甘んじては成長など望めぬ。
 貴殿も肝に銘じて一層精進されよ」

 重みのある言葉を残して去っていく。

 巨漢の姿が遠ざかりやがて見えなくなっても、俺は、一点を見つめたまま、動くことができなかった。
 消えゆく大きな背中に、もう一つの超えるべき背中を重ねて。

 左肩に焼けつく痛みより、もっと……、心が痛かった。


 ──隠していた実力に差がありすぎだ!!


 (いら)立ちを右拳に込めて地面に打ちつけた。

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