空色幻想曲
†女神の条件†
Tirnis side
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「──……様。ティアニス王女様!」
名前を呼ばれて顔を上げた。
ちょっと吊りあがった一重の細目がレンズ越しからにらんでいる。それを半眼で見かえしながら薄ぼんやりとした意識の中、「ヤバイ」と小さく舌を出した。
目の前の男性は、糸の目を弓なりに描きながらやわらかに口を開く。
「私の講義中に居眠りとは、いい度胸ですね」
「すみません……」
メガネの奥がキラリと光った。温和な笑みですごまれるとかえって怖いです、ラーファルト神官長。
大聖堂の一郭にある教室で、ただ今『神学』の講義中。時間がちがえば、たくさんの神官が神聖魔法を学ぶために使う場所だ。
なのでムダに長くつらなったイスのまんなかに、ポツン、と一人座らされている光景が寒々しい。
見おろしてくる神官長の視線はもっと寒々しい。
ダリウスのように怒りの火の粉をまき散らすことはないけれど、こっちは絶対零度の威圧感がある。おだやかな人ほど怒らせたときの破壊力はものすごいって、ほんとうだと思う。
「では、起立して聖典の『創世之章・十二神』を音読してください。そうすれば目も覚めるでしょう」
思ったより罰が軽いことにホッと胸をなでおろして、机に置いてある革表紙の聖書を開いた。
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「──……様。ティアニス王女様!」
名前を呼ばれて顔を上げた。
ちょっと吊りあがった一重の細目がレンズ越しからにらんでいる。それを半眼で見かえしながら薄ぼんやりとした意識の中、「ヤバイ」と小さく舌を出した。
目の前の男性は、糸の目を弓なりに描きながらやわらかに口を開く。
「私の講義中に居眠りとは、いい度胸ですね」
「すみません……」
メガネの奥がキラリと光った。温和な笑みですごまれるとかえって怖いです、ラーファルト神官長。
大聖堂の一郭にある教室で、ただ今『神学』の講義中。時間がちがえば、たくさんの神官が神聖魔法を学ぶために使う場所だ。
なのでムダに長くつらなったイスのまんなかに、ポツン、と一人座らされている光景が寒々しい。
見おろしてくる神官長の視線はもっと寒々しい。
ダリウスのように怒りの火の粉をまき散らすことはないけれど、こっちは絶対零度の威圧感がある。おだやかな人ほど怒らせたときの破壊力はものすごいって、ほんとうだと思う。
「では、起立して聖典の『創世之章・十二神』を音読してください。そうすれば目も覚めるでしょう」
思ったより罰が軽いことにホッと胸をなでおろして、机に置いてある革表紙の聖書を開いた。