空色幻想曲
 足の裏が床に貼りついて動かない。力任せに持ち上げようとしても羊皮紙(ようひし)一枚ぶんの隙間さえ浮かすことができなかった。
 仕方ないから首だけを後ろに回して睨み付ける。

「何をした?」

「対象の動きを止める魔法ですよ。心は(かたく)なですが、身体は素直にかかってくれて助かりました」

 この中年眼鏡……人の()さそうな糸目のニコニコ顔で実力行使とはやってくれたな。

「ふざけるな。解け!」

「おやおや、いけませんね。年長者の言うことは聞くものです。なんなら今日一日そのままにしておきましょうか」

 やけに(えつ)っている。とんだドS聖職者だ。

「行かせてくれ。どうしても俺は──」


 ──強くならなければいけないんだ!!

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