空色幻想曲
◇ ◇ ◇
騎士宿舎の前庭に降り立つ、緋い影。
まるで実体のない幽霊のように、その身を植えこみの陰にすばやく溶けこませる。
宿舎の窓に目を留めた。遠いガラス越しには、何も知らない若き騎士がやすらかなまどろみの中にいるのだろう。
ふっ、と嘲りにも聞こえるため息をこぼす。
「『目を掛けてる』……か。そんなんじゃねぇ。『利用してる』だけさ」
──アイツの力も。アイツの“想い”もな……
虚ろに開いた藍の眼に黒い炎を揺らめかせながら。
「アーウィング……」
天上のひときわ輝く一点に向かって呼んだ、亡き親友の名。
せつなる声にこめられていたのは嘆きなどではなく、心静かな決意だった。
そして、彼もまた、孤独な闘いにおもむくため、
再び“闇”の中へ──……
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騎士宿舎の前庭に降り立つ、緋い影。
まるで実体のない幽霊のように、その身を植えこみの陰にすばやく溶けこませる。
宿舎の窓に目を留めた。遠いガラス越しには、何も知らない若き騎士がやすらかなまどろみの中にいるのだろう。
ふっ、と嘲りにも聞こえるため息をこぼす。
「『目を掛けてる』……か。そんなんじゃねぇ。『利用してる』だけさ」
──アイツの力も。アイツの“想い”もな……
虚ろに開いた藍の眼に黒い炎を揺らめかせながら。
「アーウィング……」
天上のひときわ輝く一点に向かって呼んだ、亡き親友の名。
せつなる声にこめられていたのは嘆きなどではなく、心静かな決意だった。
そして、彼もまた、孤独な闘いにおもむくため、
再び“闇”の中へ──……
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