空色幻想曲


「 殺 せ る わ !!」


 叫びに呼応するかのように稲光が灰色の空を割った。
 外見なんか関係ない。それが『お父様を殺した魔族なら』……私は……っ!

「……恨まずにいられるほどできた人間じゃないし! 赦せるような慈愛の女神でもないのよ!!」

 ぶちまけた。なにもかも。この瞳を前にしたら、取りつくろうなんてバカバカしくなった。

「お前……」

 彼にしてみれば予想外の答えだったのだろう。驚きと少しのあわれみをこめたつぶやきに、急激に目頭が熱くなって走りだした。

 制止しようとする腕をふりきって。
 この場を、彼のもとを、離れるために走った。

 速く、早く、ハヤク──

 世界がゆがんでしまう前に──……
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