空色幻想曲
「公務は私がやります!!」

 高らかに宣言すると、三人がいっせいにふりかえった。神官長はメガネがずり落ちて、大叔父様はぽかんと口を開け、お祖父様は眉を八の字にして取り乱す。

「何を言い出すのだ、ティア。お前はまだ王女だ。そんなことをする必要は──」

「誕生日に即位が決まっています。ほんとうならもっと早く公務につきそわなければいけなかったのですから、遅いくらいです」

「即位には早すぎる年齢だ!」

「お母様は19で即位されたと聞いています。伯母様は、もっと早いはずだったのでしょう?」

 ライラ伯母様は17で結婚と同時に即位することが決まっていた。決めたのはもちろんお祖父様だけど、それには理由がある。

 クレツェントは昔から、女王の国だった。

 慈愛の女神が守護する国だからというほかに、歴史的に見ても女王が治める時代のほうが平和だったのだ。

 男性とちがって、子どもを産める時期が限られている女性の王は後継ぎをたくさん作れない。反面、後継者争いで王宮内がもめることも少なかった。

 当時国王だったお祖父様は、早く女王主体にもどしたほうがいいと考えていたのだ。

 ……それが、あの悲劇により壊されたのだけれど。
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