空色幻想曲
 病弱なお母様も政務にたずさわれるようにと、今度は女王代理のお父様から外の話を聞くようになった。

 お祖父様が治めていたこの国が、どれほど豊かであるか。
 民がお祖父様を“太陽王”と呼び、どれほどあがめていたか。

 お父様といっしょに国を治める立場になって、私を産んで、初めてお祖父様の『国のため』がどういう意味だったのかを知ったんだ。

 豊かなまま、民に慕われたまま、娘に国をゆずりたかったのだ……と。

 伯母様は、真意に気づく機会を得ることなく逝ってしまった。

 そして、早く継がせたいと思った結果が悲劇で終わってしまったことに、お祖父様がこの二十年どんな想いでいたのか。

 (かたく)なな心の扉を覗き見た気がした。

 ……ううん。知っていた。

 私にまだ王位の重圧を背負わせたくないこと。
 安全な城の中に留まらせていたいこと。

 私に向けるその細めた瞳から。
 頭をなでるしわだらけの温かいてのひらから。

 痛いほど、感じていた。

 だから私も、ずっと……

 ずっと──……



「お城の外に出たい」って言わなかったんだよ。


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