空色幻想曲
「なぜ急についていきたいなんて……」

「まえから考えていたことですわ。おじいさまの後継ぎはわたくししかおりませんもの」

 エリーゼの両親は数年前に馬車の事故で他界している。もうずっと長い間、この広い離宮には大叔父様とエリーゼの二人きりだった。

「視察はわたくしにとっても必要なおべんきょうではなくて?」

「エリーゼ、おまえにはまだ早い!」

「大叔父様もご自分の孫には過保護なのね。お祖父様の言い方とそっくりだわ!」

 すごく身に覚えがあるもの言いに思わず紅茶を噴きそうになってしまった。
 やっぱり血のつながった兄弟だ。

「そんなつもりは……ティアニス殿下はもうすぐ成人されますが、エリーゼは若過ぎます」

 確かにまだたったの12歳。大叔父様が過保護でなくても、ふつうなら止めるところだ。
 でもね、大叔父様。止めてもムダだと思うな。

 藍の少女は静かに深い息を吐くと、

「わたくし、知っているんですのよ」

 高い声をめいいっぱい低くして意味深につぶやいた。

「何をだ?」

 それはきっと彼女の、最後の切り札。
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