空色幻想曲
     ◇ ◇ ◇

 私の部屋から、さほど遠くない場所にある一室。
 きらびやかな天蓋(てんがい)つきのベッドに目を向けると、おだやかな笑顔が迎えてくれた。

 臥せっているため飾り気のない寝間着の姿。それでも女王としての気品は少しも損なわれていない。

 腰までまっすぐ伸びた細い銀の髪は、上質の絹糸に勝るほどの(つや)やかさで。
 曇りのないサファイアブルーの瞳は、磨きぬかれた宝石よりも気高くきらめいて。

 我が母ながら、いくつになっても美しい人だ。

「お母様、ごきげんはいかが?」

 ベッドのそばのイスに座りながら尋ねると、細い体をゆっくりと起こした。

「ええ、大丈夫よ」

 返事のわりに顔色はあまり良くない。もともと雪のように白い肌だけれど。

「ティア、今日はどうしたの? 今朝ダリウスの叫び声が聞こえた気がするけど……」

「聞こえてたの?」

 お母様の部屋まで聞こえていたなんて、恐るべし魔王ダリウス。

「ふふっ、今度はなにをしでかしたの?」

「えへへ、今日はね!」

 いたずらっぽく笑って今日の出来事を話し始めた。
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