空色幻想曲
◇ ◇ ◇
騎士宿舎の厩で青鹿毛[*1]の愛馬を見つけた。
本来の騎士は、武具や馬を自分の資産から用意するため、裕福な貴族階級しかなれない職業だった。平民が騎士になれる制度ができてからは、見習い期間の給料でそれを用意する仕組みとなった。
俺は飛び級で見習い期間もなかったし、故郷にいる愛馬は軍馬用の調教を受けていない。だから、この馬だけは就任したとき国から特別に支給されたものだ。
黒に近い毛並みを撫でて褐色の眼を覗き込む。
「頼むぞ。カイザー」
「カイザーって名づけたの?」
ちょうど芦毛[*2]の馬を連れて出てきたレガートが、からかうように尋ねてきた。
「英雄を手なずけるなんてすごいね。君って、意外と野心家?」
「そんなこと考えてなかったな」
「ははっ、君らしいね」
自分で名づけろと言われて他にいい名前が浮かんでこなかっただけだ。
一応『スウェイン二号』という候補もあったが。なぜ二号なのかというと、故郷の愛馬がスウェインだから。この名は養父がつけてくれた。でも流石に二号とつけるのはどうかと思ってやめにした。
--------------
[*1]青鹿毛……馬の毛色の一つ。全身がほぼ黒色で、鼻先や目元、尻などわずかに褐色が見られる。
[*2]芦毛……馬の毛色の一つ。一般に灰色の馬のこと。肌は黒っぽく、毛は白いものが多い。
騎士宿舎の厩で青鹿毛[*1]の愛馬を見つけた。
本来の騎士は、武具や馬を自分の資産から用意するため、裕福な貴族階級しかなれない職業だった。平民が騎士になれる制度ができてからは、見習い期間の給料でそれを用意する仕組みとなった。
俺は飛び級で見習い期間もなかったし、故郷にいる愛馬は軍馬用の調教を受けていない。だから、この馬だけは就任したとき国から特別に支給されたものだ。
黒に近い毛並みを撫でて褐色の眼を覗き込む。
「頼むぞ。カイザー」
「カイザーって名づけたの?」
ちょうど芦毛[*2]の馬を連れて出てきたレガートが、からかうように尋ねてきた。
「英雄を手なずけるなんてすごいね。君って、意外と野心家?」
「そんなこと考えてなかったな」
「ははっ、君らしいね」
自分で名づけろと言われて他にいい名前が浮かんでこなかっただけだ。
一応『スウェイン二号』という候補もあったが。なぜ二号なのかというと、故郷の愛馬がスウェインだから。この名は養父がつけてくれた。でも流石に二号とつけるのはどうかと思ってやめにした。
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[*1]青鹿毛……馬の毛色の一つ。全身がほぼ黒色で、鼻先や目元、尻などわずかに褐色が見られる。
[*2]芦毛……馬の毛色の一つ。一般に灰色の馬のこと。肌は黒っぽく、毛は白いものが多い。