空色幻想曲
 お母様は、生まれつき体が弱い。子どものころからよく臥せっていてお城からあまり出たことがないらしい。

 それをふびんに思ってか、お母様の双子の姉・ライラ伯母様が、よくお城をぬけだして外の話を聞かせてくださったのだそうだ。

 しかし、ライラ伯母様は王位継承の目前で魔族にさらわれて亡くなった。

──それが“魔族に呪われた王国”と呼ばれるようになった、最初の悲劇。

 その後、残されたお母様が女王になった。けれど病弱ゆえに、公務は女王の夫である私のお父様がしていた。
 しかし、二年前、お父様まで公務中に魔族に襲われて亡くなった。

──それが魔族のもたらした、二つ目の悲劇。

 以来、お母様はますます臥せってしまわれてお城の庭にすら出られなくなった。
 主治医は、不治の病だという。
 病弱な体に病が重なって、いつ容態が急変してもおかしくないそうだ。今は小康状態だけど『余命はいくばくもないだろう』と……。

──それが、三つ目の悲劇。

 私は、昔ライラ伯母様がそうしたように、いろいろと騒動を起こしてはその出来事を話すようになった。

 ほとんど日課のようなものだった。
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