空色幻想曲
「止まれっ!! 何か来──」

 熱風が駆け抜け火柱と御者の叫喚(きょうかん)が上がった。

 ──“火使い”の魔族だ!!

松明(たいまつ)を消せっ!!」
「結界と光の魔法を!!」

 反射的に放った俺とレガートの指示に周りが即座に反応する。

「みんな大丈夫!?」

 馬車からティアニス王女、エリーゼ姫、侍女シレネの三人が飛び出してきた。

「勝手に出てくるな!!」
「なっ──」

 すかさず叱咤したら、王女が反論しようとして青ざめる。
 言わんことない──俺は軽く舌打ちした。

 視界の端に横たわるのは御者と馬車馬が変わり果てた、黒い残骸(ざんがい)。もう少し照準がずれていれば馬車ごとこうなっていただろう。

「早く作戦を! この広さじゃ結界は三分持たない!!」

 オレンジ髪の神官──マリオンが顔を(ゆが)めながら叫ぶ。彼の張った結界は、馬車と親衛隊をドームのように囲っていた。

「王女の周辺に狭めればどれくらい持つ?」

「それなら十五分くらい。魔法力が満タンだったらね!」

「よし、合図するまで待て。一分で作戦を立てる!」

 隊員たちを一塊(ひとかたま)りに集結させる。
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