空色幻想曲
 結界の外には、いつの間にか複数の魔物が獲物を喰い殺さんとその身を闇に同化させていた。

「囲まれたみたいだ。中級以上の魔族がいるね」

「恐らくな」

 レガートの言葉に同意する。

 これが、魔族が持つ能力の一つ──モンスターを洗脳し邪悪な魔物に変貌させる力。
 魔族特有の能力は、もう一つある。

──自然の一部を操る力。

 何を操るかは個々によって異なるが、その力が先ほど御者と馬を黒焦げにした。
 火使いがいる以上、松明は火種になる。魔法で灯した光が届くのは、今いる自分たちの周辺のみ。
 視覚に頼れない暗闇で、いかに敵を知り、戦うか。

 まずは、緑髪の神官に言い放つ。


「ロキ、敵の数を感知!」

「──《審判の眼(レイフィル・イー)》!
 魔族は四、魔物は八十……いや……百近く……」

 ロキが唱えたのは、敵意を持った者の存在を感知する初級魔法。しかし、残念ながら正確な位置の把握まではできない。
 集った仲間が口々に言い合う。

「自分の攻撃魔法は、敵が捕捉できなければ無意味だ」

「ぼくは、治癒・回復担当ですし……」

「私の弓の腕でも、闇雲に撃ったところで大した効果はないだろう」

「打つ手なしじゃん! ちくしょうっ、魔族の居場所さえわかればオレの槍で……!」

「もうすぐ一分経つよ!」

 暗闇の中、見えない敵に怯え、なす(すべ)もなく追いつめられた
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