空色幻想曲
「魔族の金の──いや、光る眼を見つけられるか?」

 初めて出逢ったとき、闇の中から黒猫を難なく探し出した。夜の森を灯りなしで躊躇(ちゅうちょ)せず進んだ。

 暗闇の中なら彼女の瞳は誰より一番、真実を映す。

「ちょっ、エリーゼ姫を戦闘に参加させるのかい!?」
「ここを切り抜けなければ全員死ぬだけだ! 処罰なら後で受ける!!」

 横から挟んだ副隊長の物言いを即座に切り捨てた。戦闘も知らぬあどけない少女に無理を強いているのはわかっている。だが、彼女の歳に似合わぬ利発さを見込んでのことだ。

「やれるな?」

 沈黙は一瞬。

「──やってみるわ」

 賢明な彼女は全てを理解したように毅然とうなずいた。
 小さな少女の覚悟に、俺は立ち上がる。

「ベンはエリーゼ姫の示す位置を撃て!
 アルスはベンの援護と姫の護衛!
 前線は俺とレガートで引き受ける!
 他の者はそれに続け!!」

 最後に副隊長と視線を交わす。

「お前は好きにしろ、レガート」

「了解、グレイ隊長!」

 それ以上の言葉はいらない。

「待って、私は!?」

 王女の甲高い声が耳にすがりついた。

「私も──」

 戦いたい──皆まで言わずとも強い瞳が訴えてくる。
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