空色幻想曲
 間一髪、直撃を(まぬが)れたが、盛大な土煙(つちけむり)が上がった。

「あっぶね!! “土使い”か!?」

 アルスは咳きこみながらその姿を探すが、煙幕にさえぎられて全くわからない。それでも、闇姫の瞳を曇らせることは叶わなかった。

「あの木にかくれたわ」

 ベンも少女の言葉にもう驚きはしない。彼女は確かに見えている。

「頼んだぞ、アルス」
「まかせとけって!」

 赤髪の騎士は威勢よく槍を構え、針穴に糸を通すような正確さで大木のど真ん中を貫く!
 大木は真っ二つに裂け、陰に潜んでいた魔族ごと地に倒れ伏した。

 豪胆(ごうたん)にして洗練された一撃。

「よっしゃあ! 二人目、仕留めたぜ!!」

 森中に響きわたるほど高らかに勝利を宣言した。
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