空色幻想曲
 ムリだ。

 昼間の陽の下なら、まだ戦えたかもしれない。でも、暗闇で敵の気配だけを頼りに剣を振るうなんて今の私には逆立ちしたってムリだ。

(ホントに? 戦えた? 昼間なら?)

 私の中の自分が冷ややかな声でささやく。心の中でいくら虚勢をはっても、ふるえるだけの体にウソはつけない。

 真剣にはとっくに慣れた、はずだ。
 武器の怖さもよくわかっている、はずだ。

 わかっている、からこそ……

 暗幕の向こうでどんな惨劇がくり広げられているのか観ることはできなくても、感じることはできる。

 轟く雄叫び。いや、それは断末魔の叫びかもしれない。
 硬い金属がぶつかりながら、肉をえぐる鈍い音。
 (けぶ)るような赤い死臭が鼻を刺激する。

 ここは、本物の戦場だ。

 私を傷つけそうになったら敗北宣言したり、ぜったいに傷つけないように寸止めしてくれる騎士が相手じゃない。

 襲ってくる。殺す気で。

 結界の外をムリヤリ飛び出して自分一人が死ぬならまだいい。でも、きっとだれかを巻きこんでしまう。王女を護るために犠牲が出てしまう。
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