空色幻想曲
「剣を持って危ないことをするのもおやめなさいね。あなたにまでなにか()ったら……私は……」

「大丈夫よ、お母様! 心配しないで」

 痛いところをつかれてムリヤリ明るくかえした。相手がダリウスなら食ってかかるところだけど、お母様にそんなことはできない。

「どうして、そんなに剣を持ちたがるの?」

「え? ……えっと、自分の身を護るために」

「護衛騎士がいるでしょう」

「そうだけど。私もいざ! ってときに戦う力を持っていたほうがいいと思って」

「なんのために?」

 お母様にしてはめずらしく追及をやめない。ダリウスのように頭ごなしに怒ったりはしないけれど。
 それがかえって胸を罪悪感で締めつけた。


「……だから、身を護るために。お父様のことがあったし。最近、魔族の事件が多いし……」

「本当に、それだけ?」
「それだけよ!」

 強めの語気でキッパリと言い放つ。胸を締めつける強さも増した。
 お母様は安心とも納得ともつかない顔をしながら、それ以上の追及はあきらめたようだ。

「ティアニス……あなたに話しておきたいことがあるの」

「なに? お母様」

 話が変わったことにほっと一呼吸。
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