空色幻想曲
「使えないの」

「え?」

 エリーゼ姫が語る王家の伝承によると
『空色の髪の乙女は、慈愛の女神と同様の強い“癒しの力”を持って生まれる』
 と言われているそうだ。

 伝承を知らない国民たちは、ただ空色が女神を象徴する色だからだと思っているが。

 空色の髪に宿る、聖なる力。

 それが──“慈愛の女神”と呼ばれる真の由来。

「でも……おねえさまは“癒しの力”がつかえない」

 自身の障碍よりも、ずっと重く深いことのように憂う。

「お心の強い方だから、まったく気にしてないようにふるまっているけれど、たぶんほんとうは……」

 (にご)した言葉に、俺は胸の中で暗澹(あんたん)とした波紋が広がるのを感じずにはいられなかった。

「だから、おねえさまには見せたくなかったの」
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