空色幻想曲
「じゃあ、リュート隊長でいいですか?」

 騙されているんじゃないかと思うくらい懐っこい笑顔で聞かれた。お前、アルスじゃないだろ、絶対。

「だから敬語はいらん」

「え~?」

「大体、お前らのほうが年上だろう」

「へ?」
「は?」
「え?」

 こいつら、三つ子のように同じタイミングで間抜けた声を上げやがった。

 俺は最短にして最年少で入隊したんだがな。“英雄の再来”などと噂されていたが、どうやら最年少の部分は話題にも上らなかったらしい。

「ま、またまた~隊長さん、冗談キツイぜ。ベンはともかくオレまだ19だぜ! それより下なんて──」

「18だ」

「「「ええええええええええぇっ!?」」」

 超失礼な大合唱。

「ウソだろっ!! この顔でオレより年下ぁ!?」
 と、三白眼をおっぴろげる。

「私の少し上くらいだと思っていたが、まさかアルスより下とは」
 と言ったのは、この中で恐らく最年長のベン。

「知らなかったよ。どう見ても20代以上の落ち着きがあるから……」
 レガートは一番ぼかしたが、遠回しは余計に辛い。

「正直に『老けている』と言ったらどうだ?」

「……ごめん、気にしてたんだね」

 謝罪しながら顔は涼やかに笑っている。

 ──どうしよう。今、凄く泣きたい。

 嫌われていたときよりも精神ダメージは絶大だった。罰ゲームか、これは。
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