空色幻想曲
†消えた青空†
Tirnis side
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レグロアの町に着いてからも、私の心が檻から解放されることはなかった。
明日の朝は早くから視察があるというのに。体は妙に重く、疲れている感覚はあるけれど、宿の寝室でゆっくりと休む気になれない。
「ティアニス様、如何なさいました」
夕食とお風呂をすませた後、部屋から出たら扉の前でひかえていたシレネが呼びとめた。鉄仮面がめずらしく眉をハの字にゆがめている。
私は向けられた気遣わしげな視線を突き放すようにうつむいて言った。
「少し、散歩したいの」
「では、お供を──」
「一人になりたい。だれにも会いたくないの」
「……お散歩は、宿の敷地内になさってくださいませね」
いつもならば止められそうなものを、わりとすんなり許してくれた。
どこに行きたいとか、なにを見たいとか、そんなものはない。だれの監視もない、声も届かない場所で、完全に独りになりたかった。
とりあえず宿屋の庭なら独りになれるだろうか、と外に通じる回廊を歩いていた。
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レグロアの町に着いてからも、私の心が檻から解放されることはなかった。
明日の朝は早くから視察があるというのに。体は妙に重く、疲れている感覚はあるけれど、宿の寝室でゆっくりと休む気になれない。
「ティアニス様、如何なさいました」
夕食とお風呂をすませた後、部屋から出たら扉の前でひかえていたシレネが呼びとめた。鉄仮面がめずらしく眉をハの字にゆがめている。
私は向けられた気遣わしげな視線を突き放すようにうつむいて言った。
「少し、散歩したいの」
「では、お供を──」
「一人になりたい。だれにも会いたくないの」
「……お散歩は、宿の敷地内になさってくださいませね」
いつもならば止められそうなものを、わりとすんなり許してくれた。
どこに行きたいとか、なにを見たいとか、そんなものはない。だれの監視もない、声も届かない場所で、完全に独りになりたかった。
とりあえず宿屋の庭なら独りになれるだろうか、と外に通じる回廊を歩いていた。