空色幻想曲
王女付きの彼女が、なぜこのような場所にいるのか。職務を放棄して一人夜の散歩を楽しむようなのん気な性格とは思えない。
王女の不在に気づいて捜していたのだろうか。だとしたら、普段と全く変わらず落ち着いていられるわけがない。
この優秀な侍女は、めったなことでは取り乱さないだろうが。魔族に襲われた被災地で王女が行方不明になったら、流石の彼女も動揺の色が見えていいはず。何より、真っ先に親衛隊へ話を通すべき案件だ。
導き出される答えは一つ。
彼女はティアニス王女の行方を、知っている。
「ティアニス様は……町外れの丘にいらっしゃいます」
閉じた瞼をゆっくりと開いて問い掛けに応じた。
「丘か」
視線をシレネが歩いてきた坂道へ向ける。
「ですが、『だれにも会いたくない』と仰っています」
「誰にも?」
「はい」
「なぜ、教える?」
王女の言葉に従うなら、居場所を正直に教える必要はない。
──誰にも会いたくない王女にそれでも会いに行くのか?
試されている気がした。
王女の不在に気づいて捜していたのだろうか。だとしたら、普段と全く変わらず落ち着いていられるわけがない。
この優秀な侍女は、めったなことでは取り乱さないだろうが。魔族に襲われた被災地で王女が行方不明になったら、流石の彼女も動揺の色が見えていいはず。何より、真っ先に親衛隊へ話を通すべき案件だ。
導き出される答えは一つ。
彼女はティアニス王女の行方を、知っている。
「ティアニス様は……町外れの丘にいらっしゃいます」
閉じた瞼をゆっくりと開いて問い掛けに応じた。
「丘か」
視線をシレネが歩いてきた坂道へ向ける。
「ですが、『だれにも会いたくない』と仰っています」
「誰にも?」
「はい」
「なぜ、教える?」
王女の言葉に従うなら、居場所を正直に教える必要はない。
──誰にも会いたくない王女にそれでも会いに行くのか?
試されている気がした。