空色幻想曲
 花を()でるお父様と、歌を愛するお母様。

 二人は政略結婚で結ばれた。
 けれど、お母様はお父様からカトレアの花詞を知り、お父様はお母様からクレツェントの子守唄を聴いた。

 そうしていつしか……

 花を育てるのも、
 歌をうたうのも、
 二人いっしょにするようになったんだ。

 私はそんな二人から生まれ、愛され、育てられた。

 そばにいる者も愛せなくて、どうして国を愛せるだろう。
 自分が幸せでなくて、どうして民を幸せにできるだろう。

 知識・教養・政治力……国を治める者として必要なものはたくさんある。
 でも、それよりもなによりもいちばん“かけがえのないもの”は、ひたむきに想いあう両親の姿が教えてくれた。

『ティアもいつかきっと運命の人に逢えるよ』

 それは、星のささやきのように。自分の歌声に重なって優しく響いてきた。
 もう決して逢うことは叶わない人の言葉。

 ──お父様、ほんとうに逢えるかな? 私を私としてありのまま見てくれる、だれか。

 心から愛しあえる運命の人。

 まだ見ぬ運命(ひかり)を祈るように。
 天から見守る星にささげるように。


 私は飽きることなく……うたっていた。


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