空色幻想曲

†藍色に染まる夜†

Lute side
********************

 太陽が空の支配を月に譲り渡したころ。
 叙任式は、城の大聖堂で厳かに執り行われた。

 不治の病だという女王の姿はなかったが、前国王、神官長、大公爵……など、宮廷の重鎮たちから放たれる刺すような視線を受けながら。

 俺は裸足(はだし)で逃げ出したかった。

 そんな堅苦しい叙任式をようやく終えたと思ったら、今度は騎士のお披露目(ひろめ)があるらしい。

 目が痛くなるほどの豪華絢爛(ごうかけんらん)な装飾。
 平民では絶対口にできないような名前もわからない料理の品々。
 延々と繰り返される弦楽四重奏。

 先ほどの叙任式といい、平民出身のしかも田舎育ちの俺には場違いはなはだしくて眩暈がした。

 だが……

 貴族が集まる(うたげ)とは品の良いものを想像していたが、なんのことはない。やかましい井戸端会議と変わりなかった。

(噂好きの人間は貴族も平民も大差ないな……)

 一応この宴の主役は俺、という扱いになっている。

 本来なら騎士の叙任程度でお披露目することはない。
 が、平民の飛び級が話題を呼んだのと、空姫親衛隊が現在この国で最重要視されているからだろう。
 貴族たちから注目を浴びるのは、戦場で標的にされるに等しい緊迫感があった。
< 54 / 347 >

この作品をシェア

pagetop