空色幻想曲
それを下卑た笑いで補足する。
「配属は親衛隊時代の功績で決まる。場合によっては昇格も降格もあろう。平民出身でかつ半年余りの任期では、若干不利……。
お気の毒なことだ」
──このタヌキめ!
本心が丸わかりだ。平民相手に取りつくろう気はないということか。
「そんなことありませんわ。王女様の御めがねに適えば、そのまま女王の近衛騎士になるかもしれませんわよ!」
「まあステキ! そうなれば英雄カイザーをも凌ぐ快挙ですわね!」
華麗なフォローにタヌキの顔が一瞬歪む。が、すぐさま
「言うは易し、行うは難し。ご武運をお祈りする。では」
捨て台詞を吐いて去っていった。
タヌキの姿が充分に遠ざかってから、貴婦人たちは品の良い仕草で耳打ちする。
「リュート様。グランヴィオール伯のおっしゃることなどお気になさらず」
「ええ、ただの嫌味ですわ。ご子息のレガート様が親衛隊長になり損ねたものだから」
「あ、レガート様はステキな方ですけどね!」
(伯ということは、あのタヌキ、伯爵貴族か……)
合点がいった。伯爵子息がどこの馬の骨ともわからぬ平民に地位を奪われるなど、さぞかし屈辱なことだろう。
だが、今はそんなことよりも……。
「リュート様?」
「申し訳ない。急用ができたので失礼する」
会釈してその場を離れた。
「配属は親衛隊時代の功績で決まる。場合によっては昇格も降格もあろう。平民出身でかつ半年余りの任期では、若干不利……。
お気の毒なことだ」
──このタヌキめ!
本心が丸わかりだ。平民相手に取りつくろう気はないということか。
「そんなことありませんわ。王女様の御めがねに適えば、そのまま女王の近衛騎士になるかもしれませんわよ!」
「まあステキ! そうなれば英雄カイザーをも凌ぐ快挙ですわね!」
華麗なフォローにタヌキの顔が一瞬歪む。が、すぐさま
「言うは易し、行うは難し。ご武運をお祈りする。では」
捨て台詞を吐いて去っていった。
タヌキの姿が充分に遠ざかってから、貴婦人たちは品の良い仕草で耳打ちする。
「リュート様。グランヴィオール伯のおっしゃることなどお気になさらず」
「ええ、ただの嫌味ですわ。ご子息のレガート様が親衛隊長になり損ねたものだから」
「あ、レガート様はステキな方ですけどね!」
(伯ということは、あのタヌキ、伯爵貴族か……)
合点がいった。伯爵子息がどこの馬の骨ともわからぬ平民に地位を奪われるなど、さぞかし屈辱なことだろう。
だが、今はそんなことよりも……。
「リュート様?」
「申し訳ない。急用ができたので失礼する」
会釈してその場を離れた。