空色幻想曲
 彼──フェンネル=アキレアは、亡くなった私のお父様の親友であり乳兄弟(ちきょうだい)だ。表向きは主君と騎士という関係だったけど、幼いころはほんとうの兄弟のように育ったらしい。

 それで、私を姪と思ってかわいがってくれている。

 私の無茶なお遊びにも昔からよくつきあってくれた。騎士という立場上、ほんとうに危険なことは止めたりもするけれど、大体のことは協力してくれる。

 理由は単純明快。彼いわく「面白いから」だそうだ。

「例の準備はOK?」

「ああ、シレネにも協力してもらう」

「さすが! 根まわし早いわね。……ふふっ、腕が鳴るなぁ」

「そんなに楽しみなのか?」

「もちろん!」

 フェンネルが『門外不出』と言い私が楽しみにする、そのこととは。


 今日就任する、新しい護衛騎士のことだ。


 平民出身なのに、騎士見習いを飛びこえて空姫親衛隊の隊長に選ばれたのだとか。
 こんな異例の事態は、かつてクレツェントにいた伝説の騎士・英雄(えいゆう)カイザー以来のことだった。

 そのせいか城内では新しい護衛騎士のことを……
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