空色幻想曲
「きゃっ!」

 強引に抱き寄せて彼女のショールを剥ぎ取る。隠れていた肌があらわになった。

「なにを……っ!?」

 抗議の声を上げるが、それは途中で遮られた。吐息が混じるほどの距離で視線を交わすと、はじらうようにうつむき、瞳をぎゅっと閉じて体を強張(こわば)らせた。

 流石(さすが)の気丈な王女も力は大したことない。むしろ、このやわらかい細腕でよく剣など振り回せたものだ……と、昼間の一閃を思い出す。あの一瞬でそこそこの腕だとわかったが、俺にかかればただの女だ。

 抱き寄せた腰も、ショールで隠れていた肩も、力を込めたら折れてしまいそうで。あらわになった肌は月明かりに映し出され、暗闇の中に白く浮かんでいる様が妙に(なま)めかしい。

 思わず触れたくなるような、なめらかな素肌に、溜息を落とした。
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