空色幻想曲
「俺はお前を護るためにいる」
涙の理由も、憂いの意味も……想像したところで彼女が抱えている百分の一すら理解できないだろう。
ただ、どんなに気丈なはねっ返りでも、無邪気に笑うその裏で何かを抑えていることだけはわかったから。
主君の御身を護るのが護衛騎士の役目。本来こんなことを言うのは騎士としては行き過ぎた行為なのかもしれない。
だが……
彼女の心ごと護れないなら、俺が騎士を志願した意味がない。
「…………リュート…………」
茫然とつぶやいたその顔に、やがて女神のような極上の笑みを広げた。
「ありがとう。ホントに平気よ。痛くないって言ったらウソだけど……これは──」
目を逸らさずに、凛凛と、放つ。