空色幻想曲
「『賭け』をしないか」

「え?」

 反則技の次は変化球か?
 王女に賭け事を持ちかけるなんて、ほんとうにこの不良騎士の言動は予想がつかない。

 まあ、向こうは向こうで「このジャジャ馬姫は……」とか思っているかもしれないけど。

「賭け……って、どんな?」

 話の風向きが変わって内心身がまえた。無理難題ふっかけてあきらめさせようとしているのかも、と。そう思うはしで、この不良騎士がどんな難題を出すのかと、ちょっとワクワクしている自分も確かにいた。

 彼は少しもったいつけるように長い息を吐いてから、

「この俺に一撃喰らわせてみろ」

「一撃?」

「ああ。勝ったら稽古をつけてやる」

「ホント!? ホンットーに、たった一撃でいいの!?」

「ただし、明日から七日以内にな」

「七日もあれば、じゅうぶんよ! よーしっ、その賭け受けてたつわ!!」

 腰に手をあてて即答した。
 もっと不可能なことを持ちかけられるかと思っていたけれど、この条件なら勝てるチャンスはありそうだ。明日からと言わず、今すぐにでも始めたいほど胸が躍った。

「威勢がいいな。勝てると思うのか?」

「とうぜん! それくらいできなきゃ稽古をつける価値もないってことでしょ?」

「そういうことだ」

「私が勝ったらぜったい稽古つけてよね!? 約束よ!」

「ああ」

 しっかりうなずいたのを確認して、私は不敵な態度で片目をつむる。

「甘く見ないほうが身のためよ!」

「……楽しみだ」
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